不登校

【不登校シリーズ#5】集団行動が苦手な子どもへのサポート:学校での柔軟な対応策

 集団行動が苦手な子どもは、学校生活でさまざまな課題にぶつかります。集団での活動に参加することは、子どもたちにとって社会的なスキルを学ぶ大切な機会ですが、何らかの理由で集団行動に強い抵抗感を示す子どもにとっては、それが大きなストレスになることも。
 恥ずかしがり屋や気が弱いなどの特徴的なものだけではなく、社会的な不安や心理的な障害が集団行動を難しくさせている原因となっている場合もあります。特に発達障害や不安障害、場面緘黙(かんもく)などがその一例です。

 集団行動は子どもの社会的スキルを育む重要な機会です。しかし、これらの子どもたちにはその機会をただ与えるだけではなく、無理なく集団に参加できる機会や環境を提供することが必要になっていきます。
 この記事では、これらの要素に触れつつ、集団行動への苦手意識を克服するために学校で行える対応について詳しく述べていきます。

集団行動が苦手な理由とその背景

集団行動への苦手意識による影響

 集団行動が苦手な子どもは、集団の中で自分がどう見られるのかに対して強い不安を抱えていることが多いです。集団行動が苦手な子は、生活の中でも他の子どもたちと同じペースで行動することが難しく、一人だけ遅れたり何をしたら良いかが分からなくなったりすることがあります。他に学習の中では全員の前やグループの中でも自分の意見を述べることが難しいと感じることがあります。
 集団内での人間関係やコミュニケーションに対する緊張や不安が大きくなりすぎると、集団活動に参加する意欲が低下して、学校生活への適応が妨げられることにつながります。

 集団行動への適応については、発達段階や個々の性格にも差があります。一般に内向的な性格の子どもや、五感や他者の感情に対する感受性が強い子どもは、集団行動を苦手に感じやすい傾向にあります。不安を強く感じやすいタイプの子どもは集団の中で目立つことを避けるために、積極的に参加できないことも。
 こうした子どもたちに対しては、集団行動の型にはめようとするのではなく、個別のペースに合わせた支援を行うことが必要になっていきます。

不安障害や場面緘黙といった背景がある場合も

 集団行動が苦手な原因として、不安障害や場面緘黙も一例として挙げられます。

 不安障害は、長期間、過度に不安を感じることが特徴です。他には新しい環境や予測できない状況に対して強い不安を抱え、手の震えや息切れ、動悸などの身体症状が現れることもあります。
 不安障害がある子どもは、不安が続くことによって集団活動に参加することに対して強い抵抗感を示し、最終的には学校生活そのものが辛いものに感じられることがあります。

 場面緘黙は、特定の状況や環境で言葉を発することができない状態です。家庭では問題なく話せる子どもでも、学校の教室や集団の場では声を出すことができなくなることがあります。
 これにより集団行動への参加が難しくなります。学校においては特定の友人以外とは話せないという場合もあり、このような子どもたちにとってグループ活動への参加が大きな壁となり、学校生活で孤立感を感じる原因になることがあります。

学校での対応・支援策

始まりは児童生徒理解から

  • 子ども一人ひとりの特性を理解し、個別対応を行う
  • 子どもの不安や抵抗感を共有し、理解する
  • 子どものペースに合わせてサポートする

 個別対応は、集団行動が苦手な子どもが自分に合った形で学校生活に適応できるための基本的なアプローチです。

 教師はまず、子どもの特性や不安に耳を傾け、その子に合った支援方法を考えます。たとえば、不安障害や場面緘黙の子どもには、最初は少人数のグループでの活動から始め、無理なく集団に馴染めるようにサポートすることなどが考えられます。子どものペースを尊重することで、無理なく集団活動に参加できるように促していきます。
 必要に応じて教師は個別の支援計画を作り、関係教員間で共有するなど、学校全体で子どもへの支援を計画的に考え、取り組んでいくことが必要です。

少人数や個別での活動で学校に慣れる

  • 少人数での活動を通じて集団行動への不安を和らげる
  • 目が届きやすい環境で子どもをサポートする
  • 子どものペースで少しずつ集団活動に慣れさせる

 少人数での活動は、集団行動に対して抵抗感を持つ子どもにとって非常に効果的です。少人数であれば、全体での発表よりも目立ちにくく、過度なプレッシャーを避けながら自分のペースで活動を進めることができます。
 活動の途中、教師や支援員などが適切な声かけを行うことで、子どもは安心して活動に参加していくことができるでしょう。最初のうちは集団内での活動に慣れなかった子どもも、段階的に慣れていくことで、普段の活動の中でも自信を持って活動していくことができるようになっていきます。

段階的な集団との関わり方を通して集団に慣れる

  • 短時間で簡単な活動から始める
  • 小さな目標を設定し、成功体験を積む
  • できることから少しずつ挑戦させ、達成感を感じさせる

 いきなり他の生徒と同様の基準を求めるのではなく、スモールステップで段階的に集団活動への参加を進めることも効果的です。小さな成功を積み重ねることによって、子どもが自信を持ちつつ集団に適応することができるようになります。
 最初は短時間で簡単な作業を行い、達成感を得ることを目標にします。例えば、学習では挙手は個別ではなく、全体に対して行う(「意見がある人はいますか?」ではなく「こちらの意見に賛成な人はいますか?」という行い方)、タブレットなどを通して◯×で意見を伝えるなどの直接的な発表を避け、間接的に意見を伝えるといった方法も考えられます。
 集団の中での成功体験が積み重なることで、子どもは集団行動に対して前向きな感情を持ち、次第に自分から積極的に活動に参加できるようになります。

小さな成功体験を重ね、自信を持たせる

  • グループ活動で小さな役割を与え、成功体験を積ませる
  • 子どもが自信を持てるよう、達成感を感じさせる活動を設定する

 成功体験を積み重ねることは、集団行動が苦手な子どもにとって非常に重要です。最初は簡単な役割を与え、子どもがその役割を達成できることで自信を得ます。
 例えば、係活動や授業における役割分担などが考えられるでしょう。簡単な役割でもグループの目標達成に必要な役割を達成することで、「自分にもできる」と学習に対する意欲が高まり、集団行動への参加へ繋がることがあります。

感情表現の仕方を習得させる

  • 絵や日記を通じて、子どもが自分の感情を表現できるようサポートする
  • 子どもが自身の感情を適切に理解し、表現できる方法を教える

 集団行動が苦手な子どもは、感情を適切に表現することが難しいことがあります。そのため、感情表現の手段を習得させることが重要です。例えば絵や日記を使って感情を表現する方法やソーシャルスキルについて学習することで、子どもは自分の気持ちを適切に相手に伝える方法を学びます。
 感情表現を支援することで、子どもは集団行動に対する不安を軽減し、自信を持って活動に参加できるようになります。

専門機関や保護者との連携

教員と専門職の連携

  • スクールカウンセラーや特別支援教員と連携して個別支援を行う
  • 定期的なミーティングで子どもの進捗を確認し、支援方法を共有する
  • 支援計画を柔軟に調整し、子どもに最適なサポートを提供する

 集団行動が苦手な子どもには、学校内での支援体制の強化が求められます。教師一人ではなく、スクールカウンセラーや特別支援学校などの専門職と連携することで、子どもの個別のニーズに対応した支援が可能になります。
 例えば、場面緘黙の子どもには、専門的なサポートをスクールカウンセラーや心療内科のカウンセラーと連携することで行い、コミュニケーションにつながる環境を整えるという方法があります。また、専門家の方々と定期的に情報を共有し、学級における支援計画を柔軟に調整することで、子どもの適応を促すことが望ましいです。

親や家庭との連携

  • 家庭での支援方法を共有し、学校と家庭で協力してサポートする
  • 学校での出来事を家庭で話しやすい環境を作り、子どもの不安を和らげる

 家庭と学校の連携は、子どもが学校生活に適応するために非常に重要です。学校だけでの取り組みではなく、家庭でも子どもが学校での出来事を話しやすい環境を整えることで、子どもは自分の気持ちを表現しやすくなり、学校での不安を軽減できます。
 学校と過程が連絡帳や電話連絡を通して、小まめに連絡を取り合うなどの方法も効果的です。
 学校と家庭が一貫してサポートを行い、安心感を育てることで、集団活動に参加できるようになっていきます。

まとめ

 集団行動が苦手な子どもに対しては、個別の支援が重要になります。子ども一人ひとりの特性に合わせた柔軟な対応を行うことで、集団行動への適応を促進できますが、子どものコミュニケーションが上手く行かない状態を個性として放置してしまった場合、学校での居場所を感じられなくなったり、自尊感情が低下する可能性があります。
 そのためにも、子どもの段階的なアプローチや少人数での活動を通じて、子どもに自信を持たせることが重要です。
 その際には、家庭と学校が連携して子どもを支援し、感情表現を支える環境を家と学校で整えることで、安心して集団活動に参加できるようになっていくでしょう。

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