学校という環境は、自分と他者を比べがち。
勉強しかり、運動しかり、趣味、コミュニケーション能力、身体的な特徴など、人と比べる要素がとても多く、日常的に比較する経験をするものです。
しかし、比較が多くなりすぎると、子どもたちは自分自身を「私はできない」と捉えたり、「自分はダメだ」と感じてしまうこともあります。
特に不登校傾向にあったり、実際に不登校の状況にある子どもたちにとっては、この比較によって身動きがとれなくなることも。
過去の記事「自己肯定感を高める方法:小さな成功体験の積み重ね」や「“自分ではできない”という思い込みを乗り越えるために」では、子どもたちが自信を持てるようになるプロセスについて取り上げました。
本記事では、さらに一歩進めて、他者との比較から自由になる方法と、子どもの個性を尊重するための具体的な環境づくりについて考えていきます。
他者との比較が引き起こす問題

比較が生む感情のメカニズム
人の不幸の大半は、他の人との比較によって訪れるものです。
しかし、先ほども話した通り、学校というのは、比較が起こりやすい環境です。
特に、スポーツなどの分野での競争が激しかったり、テストによって明確に点数が出てくる環境では、子どもたちが自分の価値を他人の基準で判断してしまいがちです。
これにより、周りと比較してできないと感じる以上に「自分はダメだ」という思い込みが強化され、自己成長への意欲を失うことがあります。
また、自己効力感(自分には達成する能力があるという信念)が減っていくことで、新しい挑戦への意欲が低下し、成長する機会を逃してしまうリスクもあります。
不登校や精神的な負担への影響
他者との比較を繰り返すことによって、不登校のきっかけがつくられる場合もあります。
比較によって、
- 学級内での自分の評価が低いと感じる
- 友人に対して劣等感を抱く
- 学級内で上下関係が作られる
このような状況に陥ると、学校生活への意欲を失うことに繋がるだけでなく、友人関係の悪化などの副次的な悪影響が発生することも。
それが学校に対する恐怖感を持ったり、学校が嫌いという感覚に繋がる場合もあるのです。
他者との比較を手放すために
自分の成長を基準にする
学校で子どもに最初に教えることは、比較するべき相手は「誰か」ではなく「過去の自分」であるということです。
勉強でも運動でも、以前と比べてできるようになったことに注目することが必要になってきます。
例えば、漢字プリントの練習では、他の人の点数を比べるのではなく、自分の点数の変化に着目するということ、サッカーなどのボールゲームの練習では上手にパスを出すことができるようになるといことが挙げられるでしょう。
価値観の多様性を認める環境作り
学校における多様性を認める学校の環境づくりとしては、掲示物の工夫があるかと思います。
例を挙げるとしたら、以下のようなものでしょうか。
- 「成長の足跡」掲示板
各生徒が挑戦したことや学びを自由に記録して掲示するコーナーを設置します。
例えば、「〇〇の練習をした」「本を読んだ」など、達成したことだけでなく過程を重視して掲示するというものです。
誰かと記録と比べるのではなく、あくまで自分のペースで更新できる仕組みにします。
私の学級では、本を読んだらシールを貼るような掲示をしていました。 - 「努力を讃える賞」掲示板
成績や競技の順位とは関係なく、学校生活での努力や行動を認め合う掲示物を作成します。
例として、「教室を掃除してくれた〇〇さん」「図書館で本を整理してくれた△△さん」など、具体的な行動を可視化し、多様な価値観を評価する文化を育むことができます。
私の学級では、「認め合いの木」と称して、他の人の良いところを見つけたら、葉の形をしたカードに良いところを記入して、ボードに貼るという掲示をしていました。
このように、学業だけではなく、創造性や優しさなど、多様な面を評価する文化を育むように環境を整えることで、比較せずに評価することもできます。
子どもを知り、個性を認めることの大切さ
「自分ではできない」という思い込みを乗り越えるために
子どもが抱える「できない」という思い込みは、他人との比較から生まれる場合があります。
過去の記事で触れたように、このような思い込みを克服するには、挑戦の機会を提供し、成功体験を通じて自己効力感(自分にはできるという思い)を育むことが効果的です。
上記の記事の先でも書いていますが、子どもと関わる上で、まず、「自分ではできない」という思い込みがどこから来るのかを理解することが大切です。
思い込みは、過去の失敗体験や周囲の期待に対するプレッシャー、または他の人との比較から生まれることが多いのですが、子どもがなぜ「できない」と感じるのか、その理由を一緒に考えることで解決の糸口が見つかる場合があります。
親や周囲の大人ができること
周囲の大人にできることとして、一番大きなものは、子どもを認める・褒めることです。
子どもに限らず、誰でも自分自身を認めてもらいたいという思いを持っています。
そこで、大人は肯定的な言葉かけを意識し、他の子どもと違っても良いことを伝えることが大切です。
関わり方の具体例としては、以下のようなものがあります。
- 家庭では、兄弟姉妹間での比較を避け、それぞれの子どもの得意なことを褒める。
- 学校では、学業以外の活動(芸術やスポーツ)にも焦点を当て、成功体験を評価する。
- 子どもが挑戦したいことに対して応援し、過程を重視して成果を求めすぎない。
- 親子で一緒に取り組める趣味や活動を見つけ、楽しみながら個性を伸ばす。
- 子どもが他人を尊重する姿勢を学べるよう、多様性を認める絵本や映画を見る。
子どもが比較から自由になると

子どもに起きる変化
比較することから離れて、自分の力を高めようとすることが当たり前になれば、自分で目標を決めて頑張ろうとする姿が育っていきます。
そのためには、安心して生活することができる環境を整えることが必要ですが、安心して過ごすことができるようになった子ども達は、驚くほどの成長を見せることがあります。
例えば
- 学校で、絵を描くのが好きな子どもが自由に作品を発表できる場を設けた結果、自信を持ち、掲示物のイラスト担当を引き受けるようになった。
- テストの点数ではなく努力の過程を褒める習慣を作ったところ、子どもが自ら勉強計画を立てたり、学習に対して積極的に取り組んだりするようになった。
この他にも、家庭でも自主的に家のことを手伝ったり、自分から勉強やスポーツにの練習に積極的に取り組むようになったりと、様々な場所で主体的に行動し始めるようになっていきます。
おわりに
子どもが他者との比較を手放し、自分らしさを大切にすることができれば、子どもは伸び伸びと成長することができます。
大人はそのためのサポートをしていくことが必要なのですが、まずは大人が誰かと比較しようとすることなく、一人一人の子どものありのままの姿を見て、認めていきましょう。
あなたの関わりによって、子どもたちが比較から解放されて、自分らしさを大切にすることができるようになることを願っております。
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