社会性とは、他者と円滑に関わり、協力し合う力を指します。
これは学校生活や社会生活を送る上で重要なスキルなのですが、社会性の発達の度合いは家庭環境などの影響が大きく、児童によってまちまちです。
また学校で友達関係に悩む子どもや、不登校などの学校に通うことが難しい子どもたちにとっては、社会性を育むことが他者との関わりや自己成長への大きな手助けとなる可能性があります。
この記事では、社会性を育むための活動例と、活動を段階的に進める方法について紹介します。
スモールステップで社会的なスキルを身につけていく方法を考えていきましょう。
段階的な社会的関わりの再構築
不登校の子どもたちは、自然と人と関わることが減っていき、慣れ親しんでいない人と関わることが難しくなっていく傾向にあります。
そのため、学校の集団やグループでの活動に対して拒否感や、難しさを感じることも。
そこで、集団への関わりを増やしていくためには、まずは小さなステップで始めることが大切です。少人数のグループ活動からスタートし、徐々に社会的な関わりを増やしていきます。
スモールステップで考えると
- ステップ1:少人数との関わり
初めは親しい友達や、信頼できる大人と少人数での活動を行い、負担が少ない状況を作ります。(一緒に工作やミニゲームなど、楽に取り組めるものから始めましょう) - ステップ2:学級やグループとの関わり
少しずつ学級やグループ活動への参加時間を増やします。最初は短時間の活動や、責任の低いものから始め、段階的に参加時間や活動内容を増やしていきます。 - ステップ3:学校外との関わり
学校での関わりが難しい場合や、学校へ行くことが難しい場合など、習い事、地域のイベント(お祭りなど)やボランティア活動に参加し、社会との接点を増やします。活動していく中で社会とのつながりが深まっていくでしょう。
このように段階的に取り組むことで、人と関わることに対する忌避感を取り除くことができていくことでしょう。最初は緊張や恐れがある子どもでも、何度も挑戦し人や環境に慣れていきながら関わりを深めていくことで、子どもは他の人と協力することの楽しさや重要性を実感することができます。
2. グループ活動・共同作業
グループで協力して1つの目標に向かって作業を進めることは、社会性を育むために効果的な方法です。最初は簡単な作業から始め、徐々に難易度を上げていきます。
スモールステップで考えると
- ステップ1:小さなグループでの簡単な作業
例えば、みんなで一緒に絵を描いたり、パズルを解いたりして、協力する楽しさを体験します。 - ステップ2:グループで協力して作業
役割分担をして、みんなでひとつのものを作り上げる活動に取り組みます。 - ステップ3:大きなグループでの作業
学校のイベント準備など、より複雑でいろいろな人が関わり合う活動に取り組みます。
このようなグループ活動を通して役割分担や協力の重要性を体感する中で、他の人と相談しながらよりよい方法を探す力や、自分の意見と周りの意見を合わせていく調整能力が育っていきます。
協力しながら課題を達成することで、子どもたちは「みんなで一緒に活動して、達成する喜び」を感じていき、その体験を積み重ねることによって、自信を持って自分の気持ちを交流することができるようになっていきます。そのため、最初のうちは簡単な作業や限られた人物との交流を通じて安心感を得て、その後に少しずつ内容を責任あるものに変えていったり、交流の範囲を広げたりすることで、他の人と関わる社会的なスキルが向上していくと考えられます。
3. ピアサポートと協力活動
ピアサポート活動は、同学年、異学年集団で助け合う活動です。お互いをサポートすることで、社会的なつながりが強化されます。
スモールステップで考えると
- ステップ1:一対一の取り組み
一対一で簡単な話し合いを行い、相手の困りごとにアドバイスをすることから始めます。 - ステップ2:少人数や学級での取り組み
少人数のグループや学級内で問題解決のために意見を出し合います。学級活動などで、みんなで協力して解決策を話し合う活動などが考えられます。 - ステップ3:他学年との取り組み
異なる学年との交流活動を行うなど、より多くの人たちと協力しながら課題に取り組みます。学校のイベントやボランティア活動などを通じて、支え合いの大切さを学びます。
ピアサポート活動は、他者を支えることで「助け合い」の精神を学べる機会です。自分が助ける側としても、また助けられる側としても、お互いの集団や学校に対する信頼感を深め、協力することの大切さを実感することができます。それにより、子どもたちは「役に立った」「大切にされた」という経験を得て自己肯定感を高めていくことができるでしょう。
そのためにも、初めは簡単なサポートから始め、少しずつ複雑な問題に取り組んでいくことによって、段階的に社会的スキルを向上させていくことが大切です。
4. ソーシャルスキルトレーニング(SST)
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、実際の社会的な場面で必要なスキルを学ぶプログラムです。社会的スキル(例えば、会話の仕方、挨拶の仕方、感情のコントロール、問題解決の方法など)を学び、社会的な場面で自信を持って行動できるようにします。
スモールステップで考えると
- ステップ1:基本的な挨拶や会話等を練習します。
例えば、相手の話を聞く、笑顔などの感情にはどのようなものがあるのか、というスキルや知識を得ることから始めます。 - ステップ2:ロールプレイを通じて、日常生活で起こり得る問題にどう対応するかを学びます。
友達にお願いする時や断るとき、トラブル解決のシチュエーションなどロールプレイを通して模擬体験することで、行動するスキルを身につけていきます。 - ステップ3:異なる価値観同士がぶつかった場合など、複雑な状況における自分の立場や取るべき行動について考えます。
グループで話し合ったり、自分たちなりに問題を解決したりする活動を通して、実際の場面でのスキルや知識をを身につけていきます。
SSTを通じて、知識やスキルを身につけることで、適切に受け止めたり、発信したりすることができるようになっていきます。これらの知識やスキルが身についた子どもは実際の社会でも自信を持って行動できるようになります。特に不登校や、いじめの問題に対して効果のある取り組みとされています。
その他
「学校外の活動」への参加を促す
学校外での活動は、学校というプレッシャーから解放されて社会との関わりを深める機会になります。特に学校に対して苦手意識を持っていたり、不登校だったりした場合、学校の外に居場所があることは、子どもの心を支える一つの柱になることがあります。
学校外の居場所の例
- 地域のボランティア活動:地域の清掃活動やイベント準備を手伝うことで、他者との関わりを増やします。
- サークルなどの趣味を通じた集まり:スポーツや音楽などのサークルや習い事などに参加し、共通の興味を持つ仲間と交流します。
- 学校外での学びの場:塾や家庭教師、フリースクールなど、特に勉強に対して不安を持っている子が学力をつけることで、学校に対しての苦手意識が減っていきます。
学校外の活動を通じて、子どもは社会とのつながりを持つことができると共に、そこでの良い経験を通して、学校生活にも自信を持って取り組むことができるようになっていきます。
感情のケアと心理的サポート
社会性の発達には、感情のケアと心理的なサポートが欠かせません。特に不登校になった理由が精神的なストレスや不安である場合、子どもが自己肯定感を持てるようなサポートをすることが大切です。
サポートの方法
- カウンセリングや心理的サポート
専門家によるカウンセリングを受けることで、感情や考え方が整理され、社会に対する不安が軽減されることがあります。また、カウンセラー等に対して感情を伝えることで感情を表現する力を育むことができます。 - 安心できる環境を提供する
家族や支援する人が子どもを温かく見守り、子どもが自分のペースで社会に関わることができるようにサポートしていきます。社会的な関わりを強制するのではなく、子どもが歩き出そうとしたときにサポートできるように備えます。
心理的なサポートを通じて、子どもは自分自身を受け入れ、社会に対する不安を克服することができます。また、日々の家族や支援する人との関わりを通して自己肯定感が高まることで、他者との関わりにも前向きに取り組むことができるようになります。
まとめ
社会性の発達をサポートする活動は多様であり、学校だけではなく、地域や家庭などさまざまな場所・方法で他者と協力する力を育むことができます。スモールステップで、負担を減らしながら社会的スキルを身につけていくことが大切です。
子どもたちは、他者と協力し合うことの楽しさや、その重要性を実感することで、社会と関わることのよさや他者と関わる必要性を感じることができます。このような活動を継続的に実践することで、子どもたちの中に社会性が育っていくことでしょう。