学校生活においては、学級単位での集団生活が基本です。その中でも一日の大半をグループや友人と関わって生活していくことはみなさんも理解していただけることでしょう。
子どもたちにとって集団やグループでの生活を経験することは、協調性を育てたり、役割を持って行動することによって自己効力感を高めたりすることに繋がります。
しかし一方で、グループに馴染めない子にとっては孤立感を感じたり、自己肯定感が低下することにつながることもあります。
そこで、今回の記事では、子どもたちが学級やグループに適応し、孤立感を減退させるために教師や家庭でできる支援方法の例について話をしていきます。
孤立感を抱える子どもが抱える要因の把握
最初に大切にするべきことは、孤立感を感じる子どもがどのような要因でグループに馴染めていないのかを観察を通して知ることです。
その原因は一人一人異なりますが、よくある要因としては以下のようなものが考えられます。
- 性格や過去の経験
内向的な性格や過去のいじめ体験などが影響し、他の子どもと関わることに不安を感じている。 - 学級内の人間関係
学級内で偏ったグループや派閥が生まれていて、そこでの人間関係に悩んだり、考えに馴染むことができなかったりする。 - 社会的スキルの不足
コミュニケーションスキルや協調性が不足している。
これらの要素の内、何がその子が孤立感を感じる要因となっているのかを考え、観察や話し合いを通して原因を明らかにしていくことで、適切な支援方法を見つけることができるでしょう。
支援方法を見つける際には、応用行動分析のABCフレームを用いるなどの方法があります。教育に関する応用行動分析の書籍も出版されていますので、参考にされてみてはいかがでしょうか。
子どもへの支援方法:スモールステップでのアプローチ
子どもがグループ活動に馴染むためには、さまざまな手法が考えられていますが、孤立感を感じている子どもに対しては、「一緒にやってみてごらん」と対応を子ども任せにするのではなく、子どもへの負担が少ないであろう段階的な手立てを考え支援につなげることが考えられます。
ステップ1:個別の観察と理解
先程も述べましたが、最初に行うのは子どもが孤立感を感じる原因を知ることです。どのような場面で孤立を感じ、それによって子どもがどういった行動をしているのかを観察したり、子どもからどのようなときに孤独感を感じるのかを聞き取ったりすることから始めます。
ステップ2:アイスブレイクと集団づくり
次に、グループ活動に参加するための最初の一歩として、アイスブレイクを導入することが考えられます。アイスブレイクは子ども同士が自然に打ち解けるためのきっかけになりますので、4月の学級開き、学年開きなどで使われている学校もあるでしょう。特にクラス替えの直後など、人間関係が定まっていない段階でのアイスブレイクは子どもたちの不安の解消に繋がる場合があります。
- アイスブレイク
例として、簡単なゲーム(名前を使った自己紹介ゲームや共通点探しゲーム、みんなで協力して取り組むゲーム)を行うことで、「このグループは楽しい場所なんだ」「この人たちは協力してくれる人たちなんだ」と集団に対しての安心感を持つことに繋がります。
ステップ3:小さな成功体験の積み重ね
小さな成功体験を積み重ねることは、自己肯定感を高めることにつながります。それは、集団への適応を促すために効果的です。
子どもの「学級で上手くやれる」「自分は大切な人だ」という自己肯定感が高まれば、グループにおいても疎外感を感じることなく活動に取り組むことができる上に、ストレスに対しての耐性を得ることができます。
この自己肯定感を高めるためには日々の生活の中、子どもの「できた」「分かった」という気持ちに対して、教師や親が「よくできたね」や「ナイスアイデア!」といったポジティブな言葉かけを行うことで、その行動が小さな成功であることを子どもに捉えさせていきます。
その行動は些細なものでも構いません。生活の中で、行動したこと、できたことに対して良いものであることを価値付けていくことが大切です。
ステップ4:社会的スキルのトレーニング
子どもがグループでうまく過ごせるようになるために、社会的スキルを育むこともまた有効な手立ての一つです。
特に自己表現の経験が乏しい子に関しては、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を通して学ぶことができる知識やロールプレイを通して得たスキルを日常の場面で活用できるようにしていくことが、大切であると考えられています。
特に感情のコントロールや自分の気持ちを伝えることが苦手なこどもにとってはSSTで伝え方を指導する方法が考えられます。
番外編:安心できる場所の提供
仲間外れなどが発生し、一時的に孤立感を感じている子どもには、安心できる場所を提供することも大切です。学校であれば休み時間には保健室などに一時的に避難することも考えられます。
養護教諭に話を聞いてもらったり、スクールカウンセラーに繋いだりと担任以外の人のサポートを積極的に活用することで担任一人では難しい子どもの心のケアを行いながら、集団生活への参加をサポートしていくことが必要になる場合もあります。
教師の役割と支援環境の整備
教師は、子どもが孤立しないように積極的に子どもたちに関わり、支援する環境を整えることが求められます。そのためには誰しもがお互いを認め会えるような学級の文化を作ることが大切です。協力し合い、違いを尊重する文化を育むことで、孤立感を感じる子どもも、安心してグループ活動に参加できるようになります。
そのためには、子どもたちの心理的安全性を高めるための取り組みが必要になるでしょう。その取り組みは4月の学級開きから始まるものですが、学級のルールを明らかにしたり子どもたちにクラスで大切にしたいことを共有したりと、何をしたら良いのかを明確にしていくことが大切です。
また、子ども達を支援する環境づくりの一環として、先ほど申した通り、スクールカウンセラーや養護教諭と連携をとる方法も考えられます。
学校全体での支援体制を構築して、全職員一丸となって安心して過ごすことができる環境を整えていくことで、子どもの心理的な支援を行う基盤ができていくことでしょう。
保護者との連携と家庭での支援方法
学校で社会的スキルを育むだけではなく、家庭でも継続して子どもの成長を支援することが子どもの不安を軽減することに繋がります。
例えば、子どもの感情に親が寄り添い、「今日はどんな一日だった?」等、積極的にコミュニケーションを取ることで、不安が減少し、学校での孤立感を軽減するきっかけになる可能性があります。
学校と家庭が連携を深めることで、子どもが持つ社会的スキルについての変化の様子や課題を共有することができるようになっていきます。そうすることで、家庭と足並みを揃えた支援方法を共に考えることにつながり、より継続的に子どもに合った取り組みを実施することができるようになっていくでしょう。
また、家庭では学校では話ができないことを子どもが話すこともよくあります。そこでは、学校では話せなかった人間関係の悩みが出てくることも。
私も以前、子どもの様子がいつもと違うことを保護者の方に伝えたところ、子どもにとって気になっていることを保護者が聞き取ってくださり、それを元にして学級で指導することもありました。
学校だけ、家庭だけで解決しよう、とならないようにそれぞれが協力し合っていけるよう、家庭との連携を計っていきましょう。
まとめ
子どもたちが孤立感から脱却し、グループでの活動に参加していくためには、全体への関わり方も大切ですが、時に子ども一人一人に合わせたスモールステップでの支援が必要です。
教師は子どものペースに寄り添い成功体験を重ねさせること、家庭では子どもの気持ちを受け止めることが効果的だと思われます。
子どもがグループや学級に対して「ここにいて大丈夫なんだ」「こうしたらいいんだ!」と自信を持って過ごすことができるように、「できた」「分かった」を積み重ねていきましょう。
教師の関心と積極的なサポート、そして家庭の親御さんの支えによって、子ども達の心が成長していくことを願っております。